卒業課題論文集 黒色ニッケルースズーコバルト合金浴組成変化による色調(池辺高志)

1 はじめに

当社ではゴルフクラブのヘッドやパターなどにNiめっきを施しその上にNi-Sn-Co合金めっきを行っているが、顧客の方から安定した黒みがある色調がほしいという要望があった。補給薬品がめっきの色調にどのように変化を与えるかを調査した

2 実験方法

1L容器に表1に示す浴組成の標準液を建浴し、その浴でテストピースにめっきをし、それを標準の色調とした。

次に標準浴の薬品成分のうちひとつの濃度を順次変化させて(その他の薬品、塩化ニッケル、PH、電流密度、めっき時間、温度などは表1の標準浴組成のまま一定)めっきを行い、その色調を標準と見比べどのように変化していくかを調査してみた。なお、黒みを数値化するためにあらかじめ目視により1~10までの黒みの段階を作り、標準液からめっきしたものを8とした。

めっきの作業工程は次の通りである。

脱脂⇒水洗⇒酸浸漬⇒水洗⇒塩酸⇒ニッケルストライク⇒水洗⇒合金めっき

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3 結果と考察

各建浴用薬剤の濃度変化による黒み(色調)を表2~表6に示す。

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今回、5つの薬品濃度をそれぞれ変化させて実験を行った。薬品Aは標準濃度50ml/Lより低い時は少し黒みは下がり、増してゆくと黒みは増してゆく傾向が見られた。薬品Bに関しては、標準80ml/Lの濃度から下げても、上げてもほとんど色調に変化が見られなかった。

薬品Cに関しては、標準120ml/Lの濃度から変化させてみたが色調にまったく変化が見られなかった。薬品Dについて、標準濃度20ml/Lより低い時は少し黒みは下がり、増していくと黒みは増していく傾向が見られた。(表5)より、薬品Eに関しては、標準20ml/Lの濃度の時より低い時には色調に変化はなく、増していくと若干黒みが増したように見られた。

今回の実験によって、黒みを増すためには、スズ(薬品A)、コバルト(薬品D)、硫黄(薬品E)の濃度を上げていくと黒みが増すことがわかった。得にスズ、コバルトの濃度を上げると効果があると思われた。ここでは詳しく実験を行うとこはできなかったが、現場ラインで浴PH4.6~5.0で作業を行ったところ普段の色調より黒みを帯び、浴PHの影響も大きいことが予想された。

4 おわりに

今回の実験で、色調に変化をもたらす成分はスズ、コバルト、硫黄であることを確認したが、特にスズが減少していくとコバルト、硫黄が減少する場合よりも黒みが薄れたのでスズの濃度に気を付けなければならないことがわかった。さらに、顧客の希望の色調を出せるよう改善、改良を進めていきたい。

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