無電解ニッケルボロンめっきは、用いる還元剤ジメチルアミンボランが高価であり、
めっき浴の安定性が低く管理に技術が必要なため、特殊な用途を除いてはあまり利用されていません。
しかし、無電解ニッケルボロンめっきの特徴として、耐摩耗性、硬度、低摩擦、はんだ付け性など優れた特徴が多く、
電子、自動車、医療機器など様々な業界で活用が増加しています。
無電解ニッケルリンめっきと無電解ニッケルボロンめっき expand_more |
無電解ニッケルボロンめっきの長所、短所 expand_more |
無電解ニッケルボロンめっきの機能と用途 expand_more |
無電解ニッケルめっきは、用いる還元剤の種類によって
無電解ニッケルリンめっきと無電解ニッケルボロンめっきに分類されます。
無電解ニッケリンめっきは浴の安定性、作業性および経済性に優れているため現在、工業的に最も普及しています。
そのため無電解ニッケリンめっきは一般的に無電解ニッケルめっきと呼ばれており、本稿でも以後そのように表記します。
無電解ニッケルめっきと無電解ニッケルボロンめっきを比較し、めっき被膜の特徴を説明します。
静摩擦係数 | 動摩擦係数 | |
無電解ニッケルめっき | 0.37 | 0.24 |
無電解ニッケルボロンめっき | 0.06 | 0.04 |
無電解ニッケルPTFEめっき | 0.22 | 0.11 |
無電解ニッケルめっき | 無電解ニッケルボロンめっき | ||
皮膜の物性 | 組成(P or B含有率) | P=2~13wt.% | B=0.3~1wt.% |
組織 | 非晶質(リン含有率低いと微結品化) | 徴結品質 | |
比抵抗 | 30~200μΩ-cm | 5~7μΩ-cm | |
密度 | 7.6~8.6g/cm3 | 8.6g/cm3 | |
硬さHv | 500~700 | 700~800 | |
磁場中での磁性 | 非磁性(リン含有率低いと磁化) | 強磁性 | |
はんだ付け性 | Ni-Bより劣る | Ni-Pより良い | |
融点(状態図上) | 880~1300℃程度 | 1093~1450℃程度 | |
内部応力 | 弱い圧縮~引張 | 強い引張 | |
耐食性(耐塩水噴霧) | Ni-Bより良い | Ni-Pより劣る | |
摩擦係数 | Ni-Bより劣る | Ni-Pより良い | |
浴の特徴 | 析出速度 | 7~15μm/hr | 3~6μm/hr |
浴温 | 80~95℃ | 55~70℃ | |
浴安定性 | Ni-Bより安定 | やや不安定 | |
コスト比 | 1 | 3~5 |
機能 | 用途 | 特徴 |
摺動性 | 機械部品、精密部品 | 摩擦係数が低い |
硬度 | 機械部品、精密部品、成型金型、ゲージ | 硬質クロムメッキの代替え ⇒複雑な形状でも均一にメッキできる、無電解ニッケルメッキの代替え ⇒硬化熱処理380℃なく同等以上の硬度が得られる(ひずみ予防) |
耐摩耗性 | 機械部品、精密部品、ゴルフヘッド | 摺動性と摺動性が加わり耐摩耗性にすぐれる |
はんだ付け性 | 電子部品、端子、接点部品 | ロジンフラックスを使用して容易にはんだ付けできる |
金メッキの拡散防止層 | 電子部品 | 金メッキの下地メッキとして電気ニッケルメッキよりすぐれている |
参考文献