技術者や設計者が、めっき業者に無電解ニッケルめっきを発注される場合の品質評価方法について述べる。試験方法の選択と判定基準は、受渡当事者間の協定によること。

1. めっきの外観試験

機能的な目的に使用される無電解ニッケルめっきにおいても外観は重要な品質の一つである。

外観試験は目視によって行い、素地や下地めっきの露出、はがれ、ざらつき、焦げ、割れ、ピット、しみ、くもりなどの有無と程度について調べる。

典型的な官能試験であるため個人差を伴いやすいので、しみ、くもりなどの判定には限度見本を使用すべきである。

判定基準の例

評価項目ABC
素地や下地めっきの露出あってはならないあってはならないあってはならない
ふくれあってはならないあってはならないあってはならない
ざらつき目立ったものがあってはならない 目立ったものがあってはならない
著しいものがあってはならない
焦げ 目立ったものがあってはならない 目立ったものがあってはならない 著しいものがあってはならない
割れ、ひび割れ 目立ったものがあってはならない 目立ったものがあってはならない 著しいものがあってはならない
ピット、ピンホール 目立ったものがあってはならない 目立ったものがあってはならない 著しいものがあってはならない
変色、しみ出し 目立ったものがあってはならない 著しいものがあってはならない規定しない
くもり 目立ったものがあってはならない 著しいものがあってはならない 規定しない

2. めっきの最小厚さ試験(JIS H8501)

厚さ試験には、蛍光X線試験方法と顕微鏡断面試験方法が用いられる。

蛍光X線試験方法ではめっき被膜の化学成分(りん含有量)の違いにより若干の差を生じるので、受渡当事者間での相談を持つとよい。

弊社HP めっき技術館 りん含有量による無電解ニッケルめっきの分類 ご参照願います)

3. めっきの硬さ試験(JIS Z2251)

硬さ試験で規定されている試験法は、ビッカース硬さ試験方法とヌーブ硬さ試験方法である。両試験とも荷重を押し付けたときにできるくぼみの大きさから硬さを求める試験法で、押し付ける圧子の形が異なっている。

ヌーブ硬さは金や銀などの比較的軟質のめっきに適し、無電解ニッケルめっきにはビッカース硬さが主に用いられる。

4. めっきの密着性試験(JIS H8504)

下記のいずれかの方法で試験を行い、めっきのはく離又は膨れがあってはならない。

① 曲げ試験方法

試料を折り曲げてめっきの密着性を調べる試験方法。

素地金属の厚さが2㎜以上の場合は適用しない。

② 熱衝撃試験方法

試料を加熱急冷する熱衝撃によって、めっきの密着性を調べる試験方法。

 (例)素地金属が鉄又は銅合金の場合

加熱炉により300℃で一定時間保持 →資料を取出し水中に入れて急冷

③ やすり試験方法

試料をやすりで削って、めっきの密着性を調べる試験方法。

めっき面対して垂直に切断した資料の断面又は端面を、図に示すように素地の方向からめっき面に対して45°の角度でやすりをかける。やすりは平形で中目のものを用いる。

5. 耐食性試験(JIS H8502)

① 中性塩水噴霧試験法

塩水噴霧試験装置を使用して、50g/Ⅼの塩化ナトリウム溶液を噴霧した霧が自然落下する雰囲気に試料を保持する。装置内の温度は35±2℃に保持する。試験時間は、8,24,48、96時間など、めっきの規格や受渡当事者間の取り決めによって決定する。

参考文献

JISハンドブック 41金属表面処理 2009年1月30日 第1版第1刷発行 編集 日本規格協会

二級技能士コース めつき科[選択・電気めつき作業法] 平成22年3月15日 6刷発行 編集者 独立行政法人 雇用・能力開発機構職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター

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