ニスブラック合金めっきは、4液で構成されており、A液:SuF、B液:アンモニア、C液:光沢剤、D液:Coから成り立っている。
めっき槽は、フッ化物を含有しているので、耐熱PVC・ポリプロピレンなどの耐薬品性ライニング槽を使用し、その他のめっき液が接触する。温度計、温調などは、ラバーPVCやポリプロピレンで保護して使用する。
陽極は、純ニッケル液を使用し、Sニッケルを使用すると黒味が変わったり曇りが発生する。ろ過器は、耐フッ化物性で、循環容量が3ターン/時間以上を必要とする。ブスバーは、陽極陰極共に銅の溶解混入を避ける為に、予めニッケルめっきを施す。PHメーターは、ガラス電極が浸食されるので使用できない。従ってPH測定には、BCG試験紙を使用する。
液温は、65~70℃を維持し、温度が高すぎると、めっき液中のスズの酸化が進行し、不溶性の沈殿物となる。逆に温度は低くなるほど、光沢が失われて白く曇りやすくなる。
電流密度は、通常は0.2~0.5A/d㎡で、電流密度が高くなるほど、無光沢で黒いスス状のめっきとなる。低いと低電流部分のつきまわりが悪くなり、黒味が不足してくる。
めっき時間は、0.5~5分とする。通常2分間のめっきとし、時間が短いと、黒味が不足したり、表面硬度(550~620hr)が低下してくる。
めっき液に浸漬時、10~30秒経過後に通電すると、密着力が向上する。密着不良が発生したことがあるが、めっき液中での浸漬時間が短かったためであり、改善後密着不良はなくなった。
めっき液は、十分に水洗が必要であり、不足すると茶褐色のシミが発生しやすくなる。水洗を十分にする必要がある。本めっきは淡黒色の色調を持ちクリアー塗装などでも光沢のある外観を示す。装飾品、電気器具、科学光学装置などのめっきに適している。均一電着性とつきまわり性が良好でああり、耐食性もよい。
浴組成は、塩化ニッケル150~200g/Lを基本成分とし、ニスブラックA40~60ml/L、ニスブラックB70~100ml/L、ニスブラックC100~150ml/L、ニスブラックD15~25ml/Lを加える。
塩化ニッケル濃度は、ニッケルの濃度の分析によって、一定範囲内に維持する。めっき液を2ml採り、500mlコニカルビーカーに入れ、さらに5mlの過酸化水素水と純粋20mlを加え、ヒーターを用い約3分間沸騰させ、過酸化水素水を飛ばす。室温まで冷却後、5mlの酒石酸溶液を加え、純粋300mlとムレキサイド指示薬を加える。0.1N-EDTA標準溶液で滴定し、終点は緑色から青紫色に変わった点とする。
塩化ニッケル濃度(g/L)=11.75XAXF。Aは、0.1N-EDTA標準溶液の滴定ml数で、0.1N-EDTA標準溶液のファクターである。
ニスブラックAは、金属スズとフッ化物を含有した溶液で、金属濃度を分析し測定する。
めっき液を10ml採り、300mlのコニカルビーカーに入れ、純水100mlと濃塩酸を10ml加えた後、デンプン指示薬を加え、0.1N-ヨウ素溶液で滴定する。終点は茶褐色から青色に変わった点で見る。ニスブラックA(ml/L)=6.75XAXF。Aは0.1N-ヨウ素溶液の滴定ml数、Fは0.1N-ヨウ素溶液のファクターである。
ニスブラックBは、有機キレート剤とアンモニアを含有した溶液で、分析が困難なため、電解消耗量に応じて、定期的に補給する。また、PHを適正範囲内に保つために、PHを上げる場合にも使用する。
ニスブラックCは、光沢成分と安定剤を含有した溶液で、現場的には電解消耗量によって定期的に補給する。また、光沢が低下してきた場合は10~20ml/Lの割合で添加する。めっき液5mlを正確にピペットで分液ロートに採り、300mlのコニカルビーカーに入れ、50mlの純水と1mlの濃塩酸を加えて攪拌する。さらに75mlの酢酸エチルを加え、2分間浴攪拌した後、二層に分離するまで放置する。下層の水を捨て、純水を20ml加え5秒間振り、下層の水を捨てる。有機物液層を、滴定用ビーカーに移し、メタノール25mlを分液ロートに入れ、軽く振って分液ロートを洗う。このメタノールを、有機物液層を移した滴定用ビーカーに入れ、ブロムクレゾールパープル指示薬を0.5mlを加え、0.1N-水酸化ナトリウム溶液で滴定する。終点は無色透明から紫色に変わった点とする。
ニスブラックC(ml/L)=10.6XA。Aは、0.1N‐水酸化ナトリウム溶液の滴定ml数である。
ニスブラックDは、コバルトを含有した暗褐色をだすための成分である。ニスブラックDは、原子吸光分析装置等で、管理するが、定期的に電解消耗量によって補給する。以上の分析方法にしたがって得た結果から、約50mlの品物に対して、A:1.1㏄、C:0.5cc、D:0.25cc、塩化ニッケル0.9gを補給している。
以上ニスブラック合金めっき液の管理方法を示した。現在はこれに従って液補給、作業を行っている。分析結果も良好であり、液も安定している。