ニッケルめっきにおいて、電極間がめっき膜厚におよぼす影響を試験片のめっき厚さ分布を測定して調べた。
2-1 めっき工程
脱脂⇒水洗⇒酸浸漬⇒水洗⇒中和⇒水洗⇒電解脱脂⇒水洗⇒酸浸漬⇒水洗⇒銅ストライクめっき⇒水洗⇒酸浸漬⇒水洗⇒ニッケルめっき
2-2 浴組成
2-3 めっき槽
ニッケル液量 1400L(3000×640×730mm)
2-4 電 源
シリコン整流器:1000A.12V
2-5 試験片
図1に示したナット(材質S25C)を図2のように9個がけしたラックを60mm間隔で横9列にめっき槽の中央に配置し、一回のめっきで81個のナットにめっきした。
なお、めっき厚さ測定は図1に示したようにt1,t2,で図2に示した1~9の各試験片2箇所ずつである。
めっき厚さの測定には電解式めっき厚さ測定器を使用した。
図2に示したように陰極との距離を120.200.280.360mmに変化させ、電流200A、めっき時間5分間一定とし、それぞれ1~9の位置の試験片のめっき厚さを測定した。また浴電圧の変化も測定した。
測定結果をまとめると、表2のようになる。表2より、電極間距離と電圧の関係を図3。また、測定位置とめっき厚さの関係を図4のグラフに示した。
5-1 電極間距離と浴電圧の関係
全電流200A一定という条件のもとでの両者の関係は、図3のグラフに見れるように、電極間距離が大きくなれば浴電圧が大きくなり、ほぼ正比例している。このことは、使用電力量に大きく影響する。たとえば、同じ厚さのめっきをする場合、単純に考えて、グラフでの最小電圧5.0Vと最大7.5Vとでは50%もの電力量の差となる。
5-2 測定位置と膜厚の関係
図4のグラフに示したように、t1,t2ともすべての電極間距離において、中央部に近付くにしたがってめっき厚さが薄くなる傾向を示す。とくに、十分に横幅のあるめっき槽を使用したためである。
一般に、品物の表面にすべて同じ厚さのめっきを施すには、陽極をできるだけ陰極に近づけて同一距離でめっきすればよいと言われている。本実験において、電極間120~360mmの範囲では、均一性に関して著しい差はみられなかった。それよりも、ラックとブスバーおよび試験片との接触およびニッケル板の位置が微妙にめっき厚さのバラツキに影響していると考えられる。このあたりに電流分布の難しさを勉強させられた。
電極間距離を変化させて電流分布を考えようとしたが、実験的なまずさもありあまり良い結果は得られなかった。しかし、いろいろな要因が作用して電流分布をデリケートなものにしていることが少し理解できた。