メッキ技術情報
りん含有率による無電解ニッケルめっき被膜特性の違い
低りんタイプ りん含有率4%以下
- めっき析出状態で最も被膜硬度が高い
条件によっては最高Hv700程度 - 耐アルカリ性に優れる
- ガラス等の特殊素材への密着性が良い
- 還元効率が高い
- はんだ濡れ製に比較的優れる
ただし、保存条件が良い場合 - 浴寿命がやや短く、高コスト
中低りんタイプ りん含有率6~8%
- 無電解金めっきの付きまわりが良い
パターン性が良好であるため - 金下地メッキとして使われる
例)プリント基板、パッケージ関係
中りんタイプ りん含有率9%前後
- 耐食性・防食性に優れる
- 浴の使い易さに優れる
- 析出速度に優れる
- 一般素材への付きまわりに優れる
- 諸物性のバランスが良く、汎用性が高く、用途が広い
中高りんタイプ りん含有率10~11%
- 耐食性及び耐酸性に優れる
- 高りんタイプより析出速度に優れる
- 高りんタイプより使い勝手が良く汎用性が高い
高りんタイプ りん含有率12%以上
- 比較的高温で熱処理しても非磁性を保つ
- 耐酸性に優れる
- 浴が安定で濁りにくい
- 析出速度が遅い
- 比較的光沢が無い
- 非磁性特性を活かした下地めっきに利用される
例)ハードディスク
りん含有率によって被膜特性が変化する理由
無電解ニッケル・りん複合めっきは、りん含有率によって被膜特性が変化します。その理由は、結晶構造が変化するためです。還元剤として使用する次亜リン酸塩は、被膜形成速度によってりん含有率を変化させます。被膜形成速度はpH、浴温、還元剤濃度、安定剤濃度などの要因によって左右されます。りん含有率が4.5%までは、微結晶構造の単一相となり、反対に10.5%を超えるとアモルファス構造の単一相となります。4.5%~10.5%の場合、微結晶とアモルファスが混じり合った状態となるため、りん含有率の変化によって被膜特性が変化するというわけです。
技術情報
- りん含有率による無電解ニッケルめっき被膜特性の違い
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