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クロムメッキ皮膜の特性~耐食性~

クロムメッキ皮膜の特性~耐食性~

クロムメッキの耐食性は、クロムメッキ皮膜自体の耐食性と素地保護としての耐食性の二つに分けて考える必要があります。

①クロムメッキ皮膜自体の耐食性

クロム金属は鉄や亜鉛より電気化学的に卑な金属ですが、空気中で表面に緻密な酸化膜が形成されて安定になり、この酸化膜によって下記の化学薬品に対して耐食性を示します。

クロム金属が耐食性を示す化学薬品一覧
アンモニアガス、硫化水素、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ミョウバン、ギ酸、ステアリン酸、ピクリン酸、サリチル酸

また、石炭ガス、過熱水蒸気、多くの果物の酸、砂糖、ビール、グルー、ミルク、紙パルプ、石油、印刷インク、尿素樹脂、ビニル樹脂などの合成樹脂、ゴム、石鹸、タンニン酸などにも侵されません。

一方で、下記薬品に対しては激しく浸食されます。

クロム金属を激しく浸食する薬品一覧
塩酸、フッ酸、リン酸、稀硫酸、クロム酸、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム、硝酸銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、塩化すず、シュウ酸、クエン酸、乳酸

②素地保護としての耐食性

硬質クロムメッキ層に存在するクラックは膜厚が50μmある場合でも、クラック同士の重なりが素材へ到達することがあります。この隙間に腐食性のある溶液が浸透すると素地の腐食が起こります。クロムメッキ皮膜と鉄素地との間で局部電池が形成され、鉄が溶解して電子を供給するためです。クロムメッキ後にバフ仕上げを行うとバフの油分がクラックに浸透することと、表面のクラックが塑性変形で閉じることから耐食性は向上します。また、メッキ条件をクラックフリーになるよう調整することや、下地メッキを施すことで耐食性向上が図られます。

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