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直販型のお笑い

コンプライアンスが厳しい昨今です。人気芸人、ダウンタウンの松本人志氏が1年10か月ぶりの復帰が11月1日を目前としていますが、賛否両論の嵐が吹き荒れています。ただし、インターネットを主戦場とした活動、ファンクラブ形式の配信に制限を設ける法律はなく、スポンサーではなく視聴者がコンテンツを購入し続けるかどうか決めるというスタイルは、これしかないというものだと言わざるを得ません。

そもそも、松本人志氏がテレビに出られなくなった後もTikTok、YouTube、Instagramのショート動画には氏がやっていた人気番組の切り取り動画を観ない日は無いぐらい出て来ていて、その人気に衰えが無いと言えることと、コンプライアンス・アウトである状態だから嫌い、見ない、とファンはならないという点からも復帰後の進展についてはかなりの耳目を集めているわけです。

嫌なら見なければいい

テレビやラジオは、NHKを除いてスポンサーが広告費を提供することで成り立っているため、企業イメージを損ねる場合その原因となるタレントの出演はNGとなります。

炎上したタレントが、「嫌なら見なければいい」とさらに火に油を注ぐケースが後を絶たなかったのは、例えば芸人や俳優が、自分を目当てに見に来てくれる観客を相手にする舞台人であることと、テレビに映りスポンサーからお金をもらった上で番組の視聴率を上げる仕事をするということに大きな違いがあるという構造を理解しきれていないから発せられるものであると私は思います。

実際、松本人志氏はその超越した笑いのセンスから、芸人から最も尊敬される芸人として長く君臨していて、はっきり言って素行の悪さも込みで面白いからこそ、その危うさが人気の根底にあったものの、スポンサーが攻撃されかねないコンプライアンス上の問題に関しては上記の構造に抵触してしまったからであり、嫌じゃないけど見れないという状況が引き起こされました。

好きなら見ればいい

月額1,100円、年額11,000円の視聴料を取る直販型お笑いにシフトするのは冒頭でも書いた通り至極当然というか、これ以外に道がないわけではないが最も効率よく表舞台に返り咲く方法であったと言えます。

アダルトコンテンツと同様に、見たい人はお金を払って見ればいいんだと割り切った分、テレビより強い表現が今後可能になり、さらに面白くなることは間違いないと考えられます。

テレビがスポンサー企業のコンプライアンスに伺いを立てながら番組を作っていかなければならない以上、赤ちゃんと動物ばかりがゴールデンタイムを彩り、ネットコンテンツへ視聴者が流れて行くのは大きな流れとして変えられないものとなってしまうのでしょう。あえて言う必要もありませんけれど。

芸能人のライフサイクル

これまで劇場に出て下積みして、賞レースやオーディションでチャンスをつかんでテレビに出て、徐々に露出を増やしていくというスタイルから、YouTubeを使ってファンを獲得して、落下傘部隊のようにある日突然ショービジネスの世界に現れて人気者になるというパターンが出てきた、つまり選択肢が増えてきたことに加えて、もう一つ重要なことが今回のDownTown+サービス開始から読み解けます。

YouTubeなどインターネットでの直販コンテンツが、テレビに何らかの事情で出られなくなった芸人のセーフティーネットの役割を果たすように定着しつつあることが見えてきました。

ネットで大人気だけどテレビには出てこない。

これは、ある意味地方営業で荒稼ぎしてテレビに出てこなかった芸人とも近い感じがあります。生業としての芸人。レッドオーシャンで、私生活のミス、失言による炎上、先輩後輩スポンサー企業への配慮など高度な社会性を求められる場で、本当に面白いことが言える人は一握りであると同時に、本来芸人に必要な面白さと、何よりもクリエイティブな部分が無い状態でも、政治が上手い芸人が生き残りいつしか芸能人に成っているつまらなさが、本当の意味で解消されて行くのかもしれません。

DownTown+を真似て、テレビの世界から消えて行く大物芸人が現れ続けることを期待しています。

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