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追尾式カメラ

これは大体11年前の2012年ぐらいの話です。

Cisco社のビデオ会議システムの最新式の物が導入され、私が働いていた企業でも海外拠点とのやり取りをそいつを使ってやっていこうということになっていたのですが、如何せんほとんどのメンバーが英語がそれほど得意ではなかったため使うことはなく、開いている会議室が無い時だけその部屋が使われる物の、海外拠点との会議にそのビデオ会議システムを使うことはありませんでした。

突然の命令

シンガポールに、我々の営業チームの上司となる人物がいて、そこへ部長がミーティングをするため呼ばれることになりました。

部長がいない静かな日々が続いていたのも束の間、課長から突然の命令が下されます。

「大変だ。シンガポールの偉い人たちが、日本のチーム全員とビデオ会議システムを使って会議をしたいそうだ。あの部屋へ全員集合しろと言われている。」

その日出張を入れていなかったことを心から後悔する営業部の面々。

そして、そこに待ち受けていたのは恐ろしい最新鋭のビデオ会議システムでした。

Ciscoの動くアレ

Ciscoが誇る当時最新のビデオ会議システムは、なんと喋っている人にオートフォーカスする、自動追尾モードが備わっていたのでした。

会議開始の合図を受けて「はろ~」など言ったのが自分だけだった時、大きな画面に自分が大写しになるのです。英会話慣れしていない僕たち私たちからすると、対面でもしんどいのに誰にどう見られているか分からないカメラの前で英語で発言するのは無理だと悟り、誰一人喋らなくなりました。

最早、韓国のネットフリックスドラマ、イカゲームで冒頭行われただるまさんがころんだの様に、動いた瞬間カメラに狙われるのではないかという緊張感。衣擦れの音すら許されない恐怖感。これに支配された午後1時過ぎ。

一人の居眠りが騒動を巻き起こす

我々の隣の部署にいた女性スタッフが、なんとそんな緊張感の中居眠りを開始。

そして、いびきを立てたのか、自動追尾式カメラは無情にも彼女を大写しにしてしまう。

誰かが焦って喋り始め、その女性スタッフはフレームアウトして行ったのだが、我々から見て画面向こう側、シンガポールの面々はその一瞬を見逃さず、不穏な空気に耐えかねたシンガポールにいる部長から、PCのチャットソフト宛てに課長宛てに「早く〇〇を起こせ」という悲痛な叫びが届きました。正直自分も眠くて眠くて仕方が無かったので、彼女が怒られたことで私も怒られる前に余りの空気の悪さに目が覚め、やんごとなきを得られたのです。

その時我々全員が、怒りの矛先が女性スタッフにしか向いていないことを確認しつつ、シンガポールで画面越しにマジ切れしている部長の姿を見て肩を震わせて笑っていました。

「おい起きろ!」と言ったらそれが大写しにされるし、起こさなければみっともない姿をシンガポールの上司へ配信し続けることになる。

外国人「おい、どうしてジャパニーズチームはみんな笑ってるんだ?」

本当に止めて欲しい。

それ以後、ビデオ会議システムを使う人はいませんでした。

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