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無痛分娩を傍で見守った経験から見えたそのメリット
つい先日、妻が無痛分娩で第一子を出産致しました。無痛分娩を入院から傍で見守ったことで、色んな事が分かったのでここで書いてみたいと思います。
妊娠したことが分かった時、妻は無痛分娩がいいと主張し、私も無痛分娩に肯定的だったため無痛分娩を選択することにしました。しかしながら、無痛分娩は対応している病院も限られていたのですが、根気強く妻がインターネットで調べたり電話で聞いたところ、実家の近所にあるクリニックが初産でも対応してくれるということで、出産をそこですることに決めました。
最初はひと月に一度、臨月に近づくと二週間に一度のペースで通院し、胎児の発育や子宮口の開き具合などを確認していたそうです。仕事が休みの日に一度診察に立ち会わせてもらいました。最近は産休を貰えるギリギリまで働く妊婦の方が多く、土曜日はとにかく待ち時間が長いんです。朝10時半に病院に行き、診察を終えたのが午後1時前でした。待っているその瞬間に分娩が始まると医師が駆り出されるため、診察は後回しになります。その時エコーで見た胎児の顔は、やはり産まれてきた顔と同じでした。エコー写真はピントが合っていない場合がありますが、エコーを映像で見ているとピントが合う瞬間があり、その時初めて輪郭だけでなく目鼻立ちが良くわかって感動しました。
臨月に差し掛かると普段の生活でも妻が息切れを起こしやすくなっていることが多くなり、ほとんどの移動が車になりました。妊娠37週目が一種の区切りとなり、ここを越えるともういつ産まれても大丈夫ということになるそうです。診察の結果、子宮口が人より柔らかくなっているので、破水や陣痛に気をつけておいて欲しいと告げられます。
ここで、無痛分娩が自然分娩と大きく違う点が出ました。自然分娩は臨月を迎えると、胎児が自然に降りてくるのを待ち、破水や陣痛が始まった段階で出産に挑むことになるのですが、無痛分娩の多くは計画無痛分娩という方法をとります。子宮口の開き具合を見ながら日にちを指定して入院し、陣痛促進剤を打って硬膜外麻酔を施して計画的に分娩するわけです。
決まった日までに陣痛が来てしまった場合、今回の病院では自然分娩にせざるを得ないのですが、計画分娩のためこの日に産まれるということがほぼ把握でき、会社にお休みを頂いて朝から傍で励まして出産に立ち会うことが出来ました。これが家族にとっての最大のメリットだったと感じています。
それでは、分娩当日の簡単な流れを書いていきます。
AM8時~8時20分
病院に到着し、陣痛室へ入室させられ、入院着に着替える。無痛分娩とは言っているが、実際は和痛分娩ということで、完全に痛みが無くなるわけではないと説明を受ける。また、もろもろ書類の手続きを済ませる。
AM8時25分
診察を受ける。子宮口が5cmまで開いていて、早ければ夕方6時までに産まれると告げられるがそんな兆しは全くなく、あと10時間程度で親になる実感が抱けずフワフワした感覚に夫婦ともども包まれる。
AM8時45分
陣痛促進剤の投与開始。妻は点滴が初めてで痛がった。最初は5ml/hで、そのあと30分間隔で10ml/h程度ずつ量を増やしていくことになる。お腹の張りや胎児の拍動が分かるバンドをお腹に取り付け、折れ線グラフでモニタリングを同時に開始。
AM10時07分
麻酔医が来て、AM11時ごろから背中に麻酔投与用のカテーテルを入れに来ると告げられる。
AM11時14分
カテーテルを入れるため、トイレに出なくても行くことを促されたあと手術室へ移動。手術台の上に背中を出して横向きに寝そべり、痛み止めの注射を打ち、カテーテルを入れる。痛み止めの注射が、少し痛いかもと感じるほど、点滴の針を刺す方が痛かった様子。麻酔をそこで5mlほど投与され、「正座して足が痺れるような感覚はありますか?」と聞かれるが「ありません」と応えると、同量を追加された。そのあとの診察で、子宮口が柔らかくなっているのでいつ破水してもおかしくないと告げられ、大きなナプキンを付けておくよう指示を受ける。
PM0時3分
昼食は豪華なちらし寿司。元気過ぎて余裕で完食。
PM1時22分
促進剤が効き始め、生理痛の様な痛みが出始める。会話は普通に可能。
PM1時55分
医師が陣痛室まで来て、内診していると破水。子宮口は7cmまで開いており、ここから陣痛は急激にきつくなってくる。
PM2時22分
分娩室に移動し、麻酔を投与する。これはもう分娩を始めなければならないということではなく、麻酔を投与すると歩行が困難になるからと説明を受ける。しかし、みるみるうちに眉間にしわを寄せ苦しみ始める。この辺りから暫くが陣痛のピークだったと後に知る。
PM2時55分
助産師が慌ただしく準備を始め、子宮口が9cmまで開いていて隣の経産婦よりも早く産まれる可能性があると言い、家族に産まれるまで間がないと告げてくるように言われる。分娩室に入ってもいいのは配偶者だけで、それ以外は廊下で待機するようにお願いされる。とても痛くて苦しんでいて、麻酔の追加を妻が直訴し追加される。
PM3時過ぎ
分娩台の足元が形状を変え、両足を開いて置けるようになり、手で握れるグリップも出てくる。ここで、大きく息を吐いて、吸って、吐いて、吸って、止めて息む!!!!!!また大きく吐いて、吸って、止めて息む!!!!!!!を1セットとして、2~3セット目で頭が見えてくる。「頭にたくさん毛が生えていますね。」と言われ、「え?もう!?」といった感じ。ここで会陰切開をしても良いか尋ねられ、了承し部分麻酔をして効いてきたところで切開。会陰切開も麻酔のお陰で痛みを感じることなし。さらに続けていくが、5セット目で助産師から「お母さん、顔を上げて!もう会えますよ!!」と叫ばれ、「はい、もう力抜いて!力抜かないと出せないから!!」と言われる。この時、ほぼ陣痛は感じず、少しだけ感じる痛みの波にあわせて力むだけで、頭の中に余裕があった。
PM3時25分
産まれる。赤ちゃんの口にはポンプが差し込まれて、直ぐに溺れた人が声を出しているような産声が部屋中に響き渡り、徐々にその声は大きくなってくる。母親になった妻に赤ちゃんを見せると、呆然とした顔をしつつも笑顔を作り、案外冷静な顔をしている。後で聞いた話だが、最後はほぼ痛みがなく、とにかく驚いていた。私はカメラで撮影しても良いといわれていたので、出産シーンから産湯に浸かるところ、体重を計るところ、身長を測るところ全てを映像に収めることができた。
PM3時35分
義理の両親、私の母と妹に赤ちゃんを見せに廊下へ出る。妻は産後処置の為しばらくベッドの上から動けない状況。訳が分からず焦点の合っていない目であたりをぐるぐる見回して、泣くのも忘れてしまっていた。
PM4時30分ごろ
麻酔が抜けるまで分娩室に寝かされ、その後入院する個室へ移動。赤ちゃんとの対面は翌日以降に持ち越しとなり、新生児ルーム前に家族で並んで撮影会をした。妻が出産後助産師に、「切開部分が麻酔切れたあとどれだけ痛むか怖い」と言うと、「とっくに麻酔は切れています。無痛の人はなぜか痛みが残りにくいのよ。」と言われて安心したとのこと。
PM8時
妻が夕食を食べ終わるのを見届けて病院を出る。
デメリット
- 費用が15万円余計にかかった
- 緊急帝王切開や吸引分娩など、赤ちゃんに負担がかかるリスクがあったが、今回は問題なかった
- 対応してくれる産婦人科が少ない(特に初産婦)
- 硬膜外麻酔を打つ恐怖があった(今回はほぼ痛みはなかった)
- いつ麻酔が効いていたいまいち分からなかった(陣痛は痛く、ラストスパートは痛くないという話は自然分娩でもよく耳にする話)
メリット
- 助産師曰く、分娩時点での痛がり方が自然分娩のそれとは大きく差があり余裕があった
- 出産する日にちが計画出来るため、予め準備が出来るし、仕事を休めたら朝から立ち会うことができる
- 担当医がいるうちに産むことができる
- 出産後の回復も早い
- 麻酔があるから大丈夫!痛くても、そのうち消えるはず!と御守り代わりになった。結果その心のゆとりがリラックスに繋がり、お産がかなりスムーズに進んだ。
赤ちゃんへのリスクや、出産の痛みを経験しなければ絆が生まれないというご意見も重々承知ですが、赤ちゃんを産むお母さんも大事な家族の一人だと思って、意思を尊重できたことを誇りに思います。このブログを読んで、無痛分娩への理解を一人でも多くの方に広げて、もっと普及していけばいいなと思います。
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