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”氣”という概念

先日漫画の鬼滅の刃を読み返していて、気付けば呼吸を整えていました。手からいつもより大量に発汗していたので、恐らく水の呼吸状態になっていたかもしれません。

漫画の世界では、徒手空拳のバトルを描こうとするとどうしても格闘技の知識が伴わなければ面白味に欠けてしまうため、”氣”という概念を取り入れ、ドラゴンボールで言えばエネルギー弾、ハンターハンターで言えば念能力、ジョジョの奇妙な冒険で言えば幽波紋(スタンド)という形で特殊な技を使った超能力バトルになるのが一般的です。

小学生男子憧れの武空術

1986年生まれの私が小学生のころ、ドラゴンボールでは悟飯が幽霊になった悟空と一緒に片腕で完全体セルをかめはめ波で撃破し、新シリーズである魔人ブウ編へと突入しました。

そこでは、悟飯が交際相手のビーデルが武空術(空を飛ぶ技)を教わる過程で、”氣”を練る方法を伝授されるシーンが描かれています。

そのシーン放映直後から、我々1980年代生まれの男子小学生たちは、武空術習得に向けた”氣”を練る修行を開始しました。翌朝学校へ向かうと、普段は教室の中で大騒ぎしている男子たちが私を含めてみんな必死に両手を少し開いた状態で精神統一しており、女子たちから冷ややかな目で見られていました。

もう少し話を広げると、同じ時期にアニメ版ストリートファイターでリュウが中国人の師範から、少し離れたところのロウソクを消しなさいと言われ、後の波動拳に繋がる”氣”の習得を教わるシーンがあり、それも同じような描写でかなりたくさんの男の子達に無駄な修行の時間を費やさせることになったと思われます。

現実世界で頑張るか空想世界へ期待を膨らませるか

もしかしたら世界中のどこかで”氣”を操って空を飛べるようになった天才がいるかもしれませんが、まず間違いなく私の知る限り周りの全ての男の子たちが”氣”の習得に失敗し、ジャンプコミックスの主人公のように手から何かを出せないと気付きます。

そしてまた、呼吸法などを極めることで身体能力を爆発的に伸ばすことが出来るというのも少し違っていると気付くのは、世界的に見ればヨガの達人が大晦日にリング上で闘っていないところを見ても明らかなことだと思います。ストリートファイター2に出てくるダルシムぐらいです。呼吸法だけで世界と渡り歩いているのは。

それで、中学生から高校生ぐらいになるころに、手からエネルギー弾を出して打ち合う遊びをしていては、女子たちに全くモテないことに気付き始め、本格的に格闘技をやるようになったり、スポーツに打ち込むようになるというのが活発な男の子たちの既定路線です。

私の場合、もう我武者羅に筋トレさえすれば最強の男に近づけると思い込み、中学2年生のころからひたすら毎晩筋トレをするようになりました。野球をやっていたのですが、受験を経て大学に入るころには自分の筋力に大した自信がついていて、この筋力をもってすれば通用すると誤解し、柔道部の門をくぐることとなり、力だけじゃどうにもならないし、そもそも力すら足りてないと思い知らされるわけです。

もうその大学生活を送った時点で、現実世界と空想世界とのギャップは白けるぐらいくっきり分かれてしまい、どちらかと言えば手からエネルギー弾が出ているぐらいの強さの人もいるんだということを伝えたいと思いました。

令和は異世界転生

大人になると極端で、あれだけ好きだったドラゴンボールのような漫画も読まなくなり、気付けば30代後半に差し掛かったところで、今のトレンドを聞いてみたら異世界転生モノというジャンルが相当なシェアを獲得しているではありませんか。

  1. 事故などで亡くなる
  2. 亡くなった際の行動が神様に評価されチート級(ずるい)能力を授けられ異世界で生まれ変わる
  3. 生前不遇だった頃叶えられなかった自己実現に加え、恋愛面でも思い通りに振舞うことが出来る
  4. 生前いじめられていた相手や上司などもなぜか同じ世界に転生していて立場が逆転している
  5. 異世界内での地位を不動のものにしてハッピーエンド

こういうのが受ける世の中ですから、僕らの子供のころのように”氣”がどうのこうのとか、自分を変えるために努力するとか、そんなんじゃなくてもはや生まれ変わって来世にかけて、都合のいい人生を送りたいという逃げ願望が持て囃されるというのは悲しいなと思いました。漫画読んでみたら面白いけど。

子を持つ親としては、異世界転生したくなくなるようにスポーツの世界で自己実現させてやりたいなと思います。

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