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2019年M-1グランプリ優勝漫才風ネタ台本『硬質クロムメッキ』

ツッコミ「どうもーどうも アルファメックですー」
ボケツッコミ「お願いしますー ありがとうございますー」
ツッコミ「あーありがとうございますー ねっ 今材料商様からニッケルチップをいただきましたけどもね」
ボケツッコミ「ありがとうございますー」
ツッコミ「こんなん なんぼあっても良いですからね」
ボケ「一番良いですからね」
ツッコミ「ねー有り難いですよ ほんとにね」
ボケ「入れておきましょう」
ツッコミ「ゆーとりますけどもね」
ボケ「いきなりですけどね うちのオカンがね 切削加工品のメッキを依頼したいらしいねんけど」
ツッコミ「おまえのオカン パートにしては凄い事任されてるなあ~」
ボケ「やってもらいたいメッキの種類をちょっと忘れたらしくてね」
ツッコミ「お前のオカンパートやのに どうなってんねんオカンの働いてる会社」
ボケ「でまあ色々聞くんやけどな 全然分からへんねんな」
ツッコミ「分からへんの? いや ほな俺がね オカンのやってもらいたいメッキ ちょっと一緒に考えてあげるから どんな特徴ゆうてたかってのを教えてみてよ」
ボケ「あのーロールとかに処理するとにかく耐摩耗性に優れるやつやって言うねんな」
ツッコミ「おー 硬質クロムメッキやないかい その特徴はもう完全に硬質クロムメッキやがな」
ボケ「硬質クロムメッキなぁ」
ツッコミ「すぐ分かったやん こんなんもん」
ボケ「でもこれちょっと分からへんのやな」
ツッコミ「何が分からへんのよー」
ボケ「いや俺も硬質クロムメッキと思うてんけどな」
ツッコミ「いやそうやろ?」
ボケ「オカンが言うには メッキの単価は重量に応じて決まるやつやって言うねんな」
ツッコミ「あー ほな硬質クロムメッキと違うかぁ 硬質クロムメッキがキロ単価で決まるような簡単なメッキちゃうもんなあ」
ボケ「そやねん」
ツッコミ「硬質クロムメッキはね メッキ屋が苗字の後に硬質クロムって入れるぐらい専門性の高いもんやねん」
ボケ「そやねんな」
ツッコミ「な? 硬質クロムメッキ側もね 泥臭い試作とそこから得た様々な苦労と経験があるからやっていけてんのよ」
ボケ「そやねんそやねん」
ツッコミ「硬質クロムメッキってそういうもんやから ほな硬質クロムメッキちゃうがなこれ」
ボケ「そやねん」
ツッコミ「あれほなもう一度詳しく教えてくれる?」
ボケ「なんであんなにビッカース硬さが高いんか分からんらしいねん」
ツッコミ「硬質クロムメッキやないかい 教科書に書いてたるビッカース硬さはHv1000以上に達して、湿式メッキの中で最高の硬度をたたき出すんやからあれ でも俺はね あれはチャンピオンデータやと睨んでんのよ 俺の目は騙されへんよ 俺騙したら大したもんや」
ボケ「まあねー」
ツッコミ「ほんで無電解ニッケルメッキも熱処理条件次第ではその位の硬度に達すると書かれてるんやけど、ほとんどのお客様が長年の実績から 無電解ニッケルメッキへは よー変えやんといてるんよ」
ボケ「分からへんねんでも」
ツッコミ「何が分からへんのこれで」
ボケ「俺も硬質クロムメッキと思うてんけどな」
ツッコミ「そうやろ」
ボケ「オカンが言うには 均一電着性も全然良いって言うねんな」
ツッコミ「ほな硬質クロムメッキちゃうやないかい 図面に膜厚公差±1μmで書かれてた日には ちゃぶ台ひっくり返すもんね 硬質クロムメッキはねー 治具の設計からとことん拘って、それこそ設計段階からメッキの有効面と寸法公差の許容値を決めとかんと、いざ試作する段階になって二進も三進もいかんようになってまうからねえ」
ボケ「そやねんそやねん」
ツッコミ「な? ほんで結局 仕事取って来た営業担当者が 硬質クロムメッキ職人からボロカスに言われて 硬質クロムメッキの引合に対して及び腰になるんよ」
ボケ「そやねんそやねん」
ツッコミ「そこで諦めて勉強せえへんやつは伸びへんのよ」
ボケ「そやねんな」
ツッコミ「硬質クロムメッキちゃうがな ほな もうちょっとなんか言ってなかった?」
ボケ「大体厚付けの場合一晩タンクに入れっぱなしにするらしい」
ツッコミ「硬質クロムメッキやないかい 硬質クロムメッキは恐ろしくメッキに手間と時間がかかるからね 硬質クロムメッキよそんなもん」
ボケ「分からへねんだから」
ツッコミ「なんで分からへんのこれで」
ボケ「俺も硬質クロムメッキと思うてんけどな」
ツッコミ「そうやろ」
ボケ「オカンが言うには 排水を全然気にせんでええっていうねん」
ツッコミ「ほな硬質クロムメッキちゃうやないかい 硬質クロムメッキは排水に物凄い気を遣うものなのよ」
ボケ「せやねん」
ツッコミ「硬質クロムメッキはね 六価クロムという発がん性物質が含まれたメッキ液を使うから ソービスという還元剤で処理してからpHを調整して ようやく重金属を沈殿させて上澄みだけを下水へ放流出来るんやから」
ボケ「せやねんせやねん」
ツッコミ「そんな甘く考えて始められるメッキと違うんよ」
ボケ「せやねんせやねん」
ツッコミ「硬質クロムメッキちゃうがな ほな ほなもうちょっとなんかゆうてなかったか?」
ボケ「現場のミストが辛いらしいんよ ミスト防止剤使い過ぎたら上司に怒られるから 上司の目を盗んでちょい足しするねんて」
ツッコミ「硬質クロムメッキやないかい お前のオカン 硬質クロムメッキの現場におったことあるやろ 硬質クロムメッキや絶対」
ボケ「分からへねんでも」
ツッコミ「なんで分からへんのこれで」
ボケ「俺も硬質クロムメッキと思うてんけどな」
ツッコミ「そうやて」
ボケ「オカンが言うには ジャンルでいうたら装飾やっていうねん」
ツッコミ「ほな硬質クロムメッキちゃうやないかい 確かに外観に厳しいお客様はいらっしゃるけど 機能メッキに分類分けされてるから そこ突かれたらちょっと厳しいのよ 現場としては勘弁してほしいのよー 手直しの研磨はやってると情けなくなるのよ」
ボケ「そやねんそやねん」
ツッコミ「ほな硬質クロムメッキちゃうやないかい ほなもうちょっとなんかゆうてなかった?」
ボケ「ある日突然 担当の職人さんが辞めて 仕事が受けられなくなることがあるらしいねん」
ツッコミ「硬質クロムメッキやないかい 発注の間隔と職人さんの寿命を見極めて小出しにせなあかんよ」
ボケ「そやねんそやねん」
ツッコミ「跡継ぎのおる硬質クロムメッキ屋を抑えることがまず先決 値段は後から 硬質クロムメッキに決まりそんなん」
ボケ「でも分かれへんねん」
ツッコミ「分からへんことない オカンの依頼したいメッキは硬質クロムメッキしかありえへんよ」
ボケ「でもオカンが言うには 硬質クロムメッキではないって言うねん」
ツッコミ「ほな硬質クロムメッキちゃうやないかい オカンが硬質クロムメッキではないと言うんやから 硬質クロムメッキちゃうがな」
ボケ「そやねん」
ツッコミ「先ゆえよ 俺が硬質クロムメッキ発注のポイント説明してる時どう思っててんお前」
ボケ「申し訳ないよだから」
ツッコミ「ホンマに分からへんがなこれ どうなってんねんもう」
ボケ「んでオトンが言うにはな」
ツッコミ「オトン?」
ボケ「ダイヤモンド・ライク・カーボンちゃうか?って言うねん」
ツッコミ「いや絶対ちゃうやろ もうええわー」
ボケツッコミ「ありがとうございましたー」

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