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卒業する子供に伝えたかったこと

先日息子の卒園式に立ち会わせてもらいまして、案外あっさりとした終わりに、そう言えば幼稚園の最後なんてそんなもんだったなと思い出しました。幼稚園の最後、あの日を境に一生、少なくとも30年以上一度も会うことが無くなるお友達がいるということに気付きすら出来なかった幼い自分と息子を重ねてしまいました。

彼に対して私は、今日を最後に一生会わない覚悟でお友達とお別れしてきなさいと言いました。

彼からすると、同じコミュニティから離れるということは、自分たちの意思が無ければ能動的に会えないようになるという経験が無いので、それを上手く理解することが出来なかったようで、「小学校が一緒の友達もいるし寂しくないよ。」と返してきました。

思い起こせば、高校生の時にあれだけ毎日教室で会って会話していた級友の大半と同窓会を除いて再会することはありません。その時いつも思い出すのが、3月末のあの日のことです。

僕たちの卒業式はだらだらと続いていた

私は奈良の進学校に通っていたので、卒業式が2月の中旬にあって、大学の入学試験がまだ完全に終わっていない状況下でした。そのため、2月の終わりごろまでは学校の図書室に学ランを着て通い、卒業したはずの先輩が学校へコスプレしてやってくるという後輩たちからしたらダルいシチュエーションを2週間ほど味合わせさせてしまいました。

そしてその当時学校内でコピーバンドを結成して定期的にライブハウスで順番にライブをやるという遊びが流行っていたので、3月の本当に最後に受験がひと段落就いたところで自分たちのための卒業ライブというものを企画して開催しました。

その頃自分は志望大学の学部に落ちて、滑り止めの大学への進学を心の中で何となく決めながら、友人3人と奈良の富雄にある小さなスタジオへ練習しに通ってました。

そこには同じ学校の友人が沢山いて、卒業してもこうやって好きな仲間とは直ぐに集まって会えるんだという安堵感から、自分たちがあと1か月後にやってくる新生活の中で手のひらから零れ落ちて行くように友人たちとの日常が消えていくなんてことはこれっぽっちも考えられずにいました。

やってきてしまった卒業ライブの日

何となく1か月間の準備期間を経て、卒業ライブ当日は当然の様にやってきました。15組ほど、同じ学校のバンドが次々と登場して持ち時間20分程度で演奏をしていくので、午前中に始まったライブも、気付けば夕方を過ぎていました。

後輩たちも加わってくれて、身内だらけでライブハウスは人が入れ代わり立ち代わり。これが最後なんてこれっぽっちも感じられないぐらい、いつも通り馬鹿騒ぎをしていましたが、とうとう自分たちの番も終わり、トリのバンドが演奏を始めました。

いつもと盛り上がり方が全く違う、あっという間の出来事。

ああ、たぶん自分はここでバンドを辞めて二度とこんなことしないんだろうなとその時ふと思いました。若気の至り。別に恥ずかしくもなんともないけど、この時間だけしか出来ない遊び。そんな価値観で終えた約7時間のイベント。

ふと口に出した一言

そんなトリの演奏が始まる何時間も前、後輩たちの出番が続いていた時に入って来た仲のいい女の子と会場内で会って、あたりを見回した時にふと自分の口から一言漏らしていました。

「ああ、これで本当に卒業なんやな。」

これを聞いた友達は、少し目に涙を浮かべて嚙みしめるように「ほんまやなあ」とだけ言いました。

後輩が同じようなことをやったかも全く知りませんし、先輩方がそういったことを企画してやってきたかも知りませんでしたが、こうやって自分たちの卒業というものに、学校ではないところでケジメが付けられたという経験が18年経っても思い出されるのです。今36歳でちょうどそこが人生の半分だったことを考えると、どうしても忘れられない出来事でした。

息子へ伝えたことば

冒頭で紹介した息子とのやり取りには続きがあります。

「一度お別れしたお友達と、新しいところでまた出会えることを再会と言うんやけど、それがどれだけ嬉しいことか考えてみ。だから、今日で最後やと思ってみんなと過ごしておいで。」

いつかはみんなとお別れする日が来るから、ちゃんと毎回そうやって出会いと別れを大切にしていって欲しいなと思いました。

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