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全国めっき技術コンクールで考えさせられた素晴らしいメッキという概念について
本日は普段の記事ラインナップからすると、到底考えられない様な真面目な内容で、少々面食らう方もいらっしゃるかもしれません。全く抜け感の無い、ただただ仕事の内容について言及した記事になります。予めご了承ください。本来メッキ専業者のホームページなので、そういった内容で埋め尽くされていてもおかしくはないのですが、苦手なのです。
さて、私が今回”素晴らしいメッキとは”というテーマを選んで記事を書こうと思った理由は、大阪高等鍍金訓練校という職業訓練校にある、全国めっき技術コンクールというカリキュラムの装飾クロムめっき部門についてお手伝いさせて頂いたことで、改めて考えさせられたためです。ここで書く内容は、私の完全な個人的意見であって、大阪府鍍金工業組合を運営するスタッフの総意ではないことを先に断らせて頂きます。
全国めっき技術コンクール
全国鍍金工業組合連合会、通称全鍍連が毎年主催して行われるメッキのコンクールで、ここでめっきをひらがな表記するのは本来めっきは和製英語でもなく日本語の鍍金が常用漢字ではないためひらがな表記されていることが正式であるため、このように表現させて頂いております。話が少し逸れましたが、先述の通り大阪高等鍍金訓練校では毎年生徒30名弱を全員装飾クロムめっき部門か、亜鉛めっき部門に参加してもらっています。
私は、大阪高等鍍金訓練校のこのカリキュラムの指導員として装飾クロムめっきのラインサイドに立ち、生徒にコンクールで競われる外観基準を満たす方法と、めっき膜厚を均等に、狙ったところに入れる技術について先輩から教わった通り指導しています。
課題用の試料は3個支給されるのですが、時間の関係でほとんどの生徒が2個の挑戦で再メッキなどやり直しはせずに提出します。全国からかなりの数の提出を受けるため、上位に食い込むのは運が見方をしないと難しいとされています。
特に、膜厚の管理はL字型に曲げられた板金の外側と内側のめっき膜厚を均一にニッケルメッキを10±5μm、クロムメッキを0.15±0.1μmの範囲に収めなければならず、これには企業秘密ならぬ、大阪府鍍金工業組合の門外不出である膜厚コントロールの手法が用いられています。
コンクールの実際
令和3年度、大阪高等鍍金訓練校の生徒は、銅賞に食い込む方や、それに準ずる成績であった方も多数出ました。膜厚コントロールに関して見れば、全国上位レベルにも届くレベルでしっかりと管理されていました。ただし、残念なことに角の焦げ付き(過電流)や、めっき後の乾燥ミスによる外観不良などで減点されているケースが多く、銀賞や金賞に届かなかったとも言えます。
指導者として、一貫して膜厚を決定する要因である電流条件や製品の吊るし方などのデータを常に見える化し、後半に挑戦する生徒になればなるほど膜厚の精度が増していくように手心を加えました。その甲斐あって、大阪高等鍍金訓練校の生徒は軍団として同じようなポジションに順位付けされたのですが、そのほとんどの提出試料で外観不良が発生していたことが、反省しないといけないポイントだと気づかされました。
チャンピオンデータと品質の良さ
チャンピオンデータは、製造業に携わる人間の間では「まぐれ」と呼ばれるものとして扱われています。狙い値と呼ばれる寸法精度の中央値に寸分たがわずつけてしまった、バラツキのほとんど見られないデータです。
全国めっき技術コンクールで提出され、高評価を得る提出試料はこのチャンピオンデータと呼ばれるものです。
これを毎回作れと言われて作れるかと言われると、非常に難しいと答えざるを得ません。
逆に品質の良さは、設定された公差の範囲内に常に入れ続けることだと考えています。私がこのコンクールで生徒方に告げたかったのは、ある一定のやり方を守れば設定された範囲内にメッキ膜厚を持っていくことは可能だが、本当に少しの操作違いで生まれる差を気にする必要はない、まぐれなのだからということです。
ただ、このまぐれを狙っていくことが公差を狭める、何か宇宙への挑戦を可能とする高精度なものづくりに繋がる技術の研鑽の礎であることは疑うことのない事実でもあります。
私個人的には、めっきコンクールでは量産部門を作り、設定された公差範囲を外れずにどの程度中央値に寄せて品質の良いメッキ処理が出来るかを競うのも面白いかなと思います。指導者としてそれはある意味実現できているような気もします。
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