鉄鋼
鉄(iron)は廉価で加工性に優れ入手が容易な金属です。炭素を始めとする合金元素を添加することで鋼(steel)となり、炭素量の調節や焼き入れによって硬度を調節できるきわめて扱いやすい金属素材と言えます。鉄鋼素材の種類は多岐にわたり、化学組成、炭素量、合金元素、熱処理の有無などで分類され、それによりメッキ方法も異なります。
メッキ発注前ご確認事項
1.JIS番号
あらかじめ鉄鋼素材のJIS番号が明らかであれば、前処理方法を検討する手間が省けます。言い換えれば、不具合を未然に防止するためにも鉄鋼素材の特性を把握しておくことが重要となります。下記表をご参照ください。
種別 | JIS番号 | 記号 | C% |
一般構造用圧延鋼材 | G3101 | SS | ~0.30 |
溶接構造用圧延鋼材 | G3106 | SM | ~0.25 |
溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材 | G3114 | SMA | ~0.20 |
ボイラ用圧延鋼材 | G3103 | SB | ~0.35 |
圧力容器用鋼板 | G3115 | SPV | ~0.20 |
低温圧力容器用炭素鋼鋼板 | G3126 | SLA | ~0.18 |
一般構造用炭素鋼鋼管 | G3444 | STK | ~0.30 |
機械構造用炭素鋼鋼管 | G3445 | STKM | ~0.55 |
ボイラ熱交換器用炭素鋼鋼管 | G3461 | STB | ~0.32 |
チェーン用丸鋼 | G3105 | SBC | ~0.36 |
みがき棒鋼用一般鋼材 | G3108 | SGD | ~0.25 |
鉄筋コンクリート用棒鋼 | G3112 | SR,SD | ~0.32 |
PC鋼棒 | G3109 | SBPR,SBPD | ~0.40 |
熱間圧延軟鋼板及び鋼帯 | G3131 | SPHC,SPHD,SPHE | ~0.20 |
冷間圧延鋼板及び鋼帯 | G3141 | SPCC,SPCD,SPCE | ~0.20 |
自動車構造用熱間圧延鋼板及び鋼帯 | G3113 | SAPH | ~0.20 |
軟鋼線材 | G3505 | SWRM | ~0.25 |
硬鋼線材 | G3506 | SWRH | 0.24~0.86 |
ピアノ線材 | G3502 | SWRS | 0.60~0.95 |
普通レール | E1101 | 0.50~0.75 | |
鉄道車両用車軸 | E4502 | 0.30~0.48 | |
鉄道車両用炭素鋼タイヤ | E5401 | 0.60~0.75 | |
炭素鋼鍛鋼品 | G3201 | SF | ~0.45 |
炭素鋼鋳鋼品 | G5101 | SC | ~0.45 |
機械構造用炭素鋼鋼材 | G4051 | S-C,S-CK | 0.07~0.61 |
ばね鋼鋼材 | G4801 | SUP | 0.45~1.10 |
硫黄及び硫黄複合快削鋼 | G4804 | SUM | ~0.48 |
中空鋼鋼材 | G4410 | SKC | 0.70~0.85 |
炭素工具鋼鋼材 | G4401 | SK | 0.60~1.50 |
2.炭素鋼の炭素の含有量による分類
一般的に低炭素鋼の方がメッキしやすくなります。高炭素鋼は長時間の酸洗いの際に生じる水素脆性やスマットの除去に注意しなければならず、工程が増えるなど難易度が増します。下記表に炭素含有量による炭素鋼の分類を示します。
C% | 引っ張り強さ(kg/m㎡) | 伸び(%) | 名称 | 別の分類 |
0.03~0.20 | <40 | >25 | 超軟鋼 | 低炭素鋼 |
0.20~0.35 | 40~50 | >20 | 軟鋼 | 中炭素鋼 |
0.35~0.50 | 50~60 | >16 | 半硬鋼 | |
0.50~0.70 | 60~70 | >14 | 硬鋼 | 高炭素鋼 |
0.70以上 | >70 | >8 | 超硬鋼 |
3.熱処理の有無とその方法
鉄鋼素材を加熱すると空気中の酸素と結合してスケールが発生します。炉内の酸素量(大気中、不活性ガス中、真空中)や処理時間によってその程度は変わります。570℃より高温で処理した場合、母材の上にFeO(酸化鉄)、Fe3O4(四三酸化鉄)、Fe2O3(酸化第二鉄)の構造で0.1mm~0.3mmの厚さのスケールが形成されます。また、570℃以下の温度ではFe3O4を生成します。スケールは酸洗いにより除去できますが、高炭素鋼の場合水素脆性やスマットの除去に注意しなければなりません。
鋼の硬さと強度 鋼が水素脆性の影響を受けやすいかどうかは、硬さと強度により異なります。上記の通り、硬さと強度が増すほど水素脆性のリスクが増していきます。水素脆性を防ぐためには酸処理の時間を短くするか、もしくは酸化皮膜をサンドブラストなどの機械的処理を行うことと、メッキ後にベーキング処理を行うことが必要です。
4.その他鉄鋼素材
鋳鉄(鋳物)
鋳鉄は、炭素を2.16~6.67%、ケイ素を約1~3%の範囲で含む鉄の三元合金です。一般的な機械構造用炭素鋼と比較して炭素量が非常に多く、高炭素鋼以上に水素脆性やスマット発生に気をつけなければなりません。製品の状態によってメッキのつき易さが変わりますのでご相談ください。
焼結合金
焼結合金は、複数の微細な金属粉末を圧縮成形(3~8t/㎠)し、溶融点以下の高温に保持し焼結する粉末冶金法で製造されたものをいいます。表面に多数の孔があいており、酸処理液やメッキ液によるエッチングでバラけてしまう、メッキ困難な素材です。アルファメックでは硬質クロムメッキにおいてメッキ実績があります。
アルファメック取り扱いメッキ種 | 可否 |
硬質クロムメッキ | ○ |
電気ニッケルメッキ | ○ |
無電解ニッケルメッキ Ni-P | ○ |
無電解ニッケルメッキ Ni-B | ○ |
無電解ニッケルメッキPTFE Ni-P/PTFE | ○ |
無電解ニッケル・セラミックス複合メッキ Ni-P/BN | ○ |
黒色無電解ニッケルメッキ | ○ |
硫酸銅メッキ | ○ |