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転売という現象の正体とは何か? ― 自由市場、格差社会、そして人間の欲望

はじめに:なぜ転売がこれほど話題になるのか

近年、「転売」が社会問題としてしばしば取り上げられるようになっています。人気ゲーム機、限定スニーカー、アイドルのコンサートチケット。いずれも「欲しい人が定価で手に入れられず、転売市場で高額で買わざるを得ない」という現象が起きています。

私はNintendo Swich 2の抽選2回目も落選しましたが、当選してたらメルカリで転売していたかもしれません。

この現象を巡ってはさまざまな意見がありますが、多くの議論が“感情論”に留まりがちです。「転売ヤーは許せない」「買う方も悪い」といった声がネットに溢れる一方で、転売という行為そのものは、決して違法ではありません。

このブログでは、転売を単なる“迷惑行為”ではなく、現代の経済構造、テクノロジー、そして人間の欲望の鏡として捉え、深く考察していきたいと思います。


「なぜ高くても売れるのか?」:転売は市場人気のバロメーター

そもそも、なぜ転売が成り立つのでしょうか?それは非常にシンプルで、「欲しい人が多く、供給が少ないから」です。つまり転売価格が上がるということは、その商品に対する需要が極めて高いことの証明でもあります。

任天堂Switchや限定フィギュアのように、発売後すぐに定価の数倍で取引される商品は、人気の高さそのものが価格に表れているわけです。転売という行為自体が、その商品が“本当に欲しい人にとっては、それだけの金を出す価値がある”ことの証左となっているのです。


「買う人がいるから転売はなくならない」

私自身も、UFOキャッチャーの景品などをわざわざ現地で取るより、メルカリで安く購入することがあります。その理由は、タイパ(タイムパフォーマンス)とコスパ(コストパフォーマンス)を天秤にかけた上での合理的選択だからです。

例えばNintendo Switch 2を「どうしても今すぐプレイしたい」と思ったとき、抽選や行列を避けて2〜3万円多く払うという選択をする人は少なくありません。これは贅沢でも不正でもなく、「時間をお金で買った」結果に過ぎません。

つまり、転売が成り立つのは、買う人がいるから。市場原理において、それはごく自然なことです。


メルカリとプラットフォーマーの苦悩

メルカリのようなフリマアプリも、転売市場の拡大に一役買っています。最初は“個人間取引の自由な場”として大きく成長しましたが、今では「偽物」「盗品」「脱税」「価格操作」など、“自由の裏側にある混乱”の収拾に追われています。

かつては“やりたい放題”で伸びていた時代もありましたが、現在では社会的インフラ化するにあたって、本人確認、違法取引の監視、法令順守、消費者保護といった負担を背負うようになりました。

結果として「ユーザーの自由度は下がり、運営コストは上がる」というジレンマに直面しており、“成長の果実”を味わった代償としての制度化の壁にぶつかっています。


転売の進化系:それは“質屋”である

転売屋が次に進化する先、それは質屋のような存在になると私は考えています。つまり、所有しているモノを金融資産として担保化し、それを元に信用を得るというモデルです。

メルカリも、所有物を資産化して“与信”とみなす試みに踏み出しました。自社クレジット、ローン、分割払い機能を強化し、ユーザーに「あなたにはこれだけの商品価値があるから、もっと買える」という幻想的な金融スコアを与えようとしているのです。

しかし日本人の国民性は、アメリカとは違い、借金に対して非常に慎重です。こうした試みは、多くのユーザーに警戒感を持たれ、逆にブランド毀損や離反を招く結果になっています。


技術が転売を破壊する?それとも加速する?

AIやブロックチェーンといった技術も、転売の未来を大きく左右します。

ブロックチェーンが導入されれば、商品の真正性や所有履歴が可視化され、偽物や盗品の転売は激減します。一方で、それは中間鑑定業者の排除につながり、よりスムーズかつ透明な転売市場が生まれる可能性もあります。

AIが価格予測や売買タイミングを補助し、スマートコントラクトで自動精算まで完結すれば、転売は一層効率化され、人手すら不要になります。

つまり、技術の進化は転売を減らすのではなく、“再定義”するということです。


自由市場の果てにあるもの:幸福か、格差か?

転売は、経済活動の一形態であり、市場原理の縮図です。そして自由市場が極限まで進んだとき、問われるのは「それが人間を幸せにするか?」という倫理的な問いです。

私の答えは、「No」です。

自由とは、強者にとっては楽園であり、弱者にとっては地獄です。自立、競争、選択。それらすべてができる人にとって自由経済は素晴らしい環境ですが、できない人にとっては、自己責任という名の孤独を突きつけられることになります。


デジタルとリアルの間にある価値

所有という概念も、今後は“物理的”なものから“デジタル証明”へと変わっていくでしょう。NFTやデジタル資産が象徴するように、所有の本質は「自分が持っていると認識できる証拠」であり、それがブロックチェーン上に残るなら、リアルなモノは必ずしも必要ではありません。

しかし一方で、人間の生存はリアルに支えられています。製造業、農業、物流、サービス。これらがなければ、デジタルだけでは生きていけません。

だからこそ私は、最終的には「デジタル経済が進化すればするほど、リアルな産業の価値が再発見される」と予測しています。


結論:転売とは現代社会の鏡である

転売を単なる“迷惑な営利行為”と断じるのは簡単です。しかしその実態は、市場原理、消費者心理、技術革新、社会制度、倫理観、国家の介入といった、あらゆる社会的要素が交差する、現代社会の縮図とも言える現象です。

これからの社会を読み解くうえで、転売という“最小の経済行動”から、大きな構造を見つめ直すことは非常に有意義だと、私は考えます。

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