無電解ニッケルボロンめっきとは

無電解ニッケルボロンめっきとは

無電解ニッケルボロンめっきとは

無電解ニッケルボロンめっきは、用いる還元剤ジメチルアミンボランが高価であり、
めっき浴の安定性が低く管理に技術が必要なため、特殊な用途を除いてはあまり利用されていません。
しかし、無電解ニッケルボロンめっきの特徴として、耐摩耗性、硬度、低摩擦、はんだ付け性など優れた特徴が多く、
電子、自動車、医療機器など様々な業界で活用が増加しています。

無電解ニッケルリンめっきと無電解ニッケルボロンめっき

無電解ニッケルめっきは、用いる還元剤の種類によって
無電解ニッケルリンめっきと無電解ニッケルボロンめっきに分類されます。
無電解ニッケリンめっきは浴の安定性、作業性および経済性に優れているため現在、工業的に最も普及しています。
そのため無電解ニッケリンめっきは一般的に無電解ニッケルめっきと呼ばれており、本稿でも以後そのように表記します。

無電解ニッケルボロンめっきの長所、短所

無電解ニッケルめっきと無電解ニッケルボロンめっきを比較し、めっき被膜の特徴を説明します。

無電解ニッケルボロンめっきの長所

  1. 皮膜上に酸化膜を形成しにくいです。
  2. 1により、無電解ニッケルめっきと比較して変色が少ないです。また、硬度を上げるための熱処理時の変色が少ないです。
  3. 良好なはんだ付け性を示す等の特性を示します。
  4. ボロン(ほう素)はリンよりも合金成分として皮膜中に含有されにくいので、導電性の良さ等、純ニッケルに近い特徴を持つことです。
  5. 摩擦係数が低いです。

表面性測定器 荷重100g 速度200㎜/分(めっき同士)

  静摩擦係数 動摩擦係数
無電解ニッケルめっき 0.37 0.24
無電解ニッケルボロンめっき 0.06 0.04
無電解ニッケルPTFEめっき 0.22 0.11

無電解ニッケルボロンめっきの短所

  1. 非品質(アモルファス)化の進んだ無電解ニッケルめっき皮膜よりも、微結晶質性の無電解ニッケルボロンめっき皮膜は粒界腐蝕しやすいため一般に耐食性は悪いです。
  2. 皮膜の内部応力が引張方向に大きいという弱点もあります。
  3. めっき析出速度が遅いです。無電解ニッケルボロンめっき 3~6μm/hr、無電解ニッケルめっき 7~15μm/hr

無電解ニッケルめっきと無電解ニッケルボロンめっきの違い

  無電解ニッケルめっき 無電解ニッケルボロンめっき
皮膜の物性 組成(P or B含有率) P=2~13wt.% B=0.3~1wt.%
組織 非晶質(リン含有率低いと微結品化) 徴結品質
比抵抗 30~200μΩ-cm 5~7μΩ-cm
密度 7.6~8.6g/cm3 8.6g/cm3
硬さHv 500~700 700~800
磁場中での磁性 非磁性(リン含有率低いと磁化) 強磁性
はんだ付け性 Ni-Bより劣る Ni-Pより良い
融点(状態図上) 880~1300℃程度 1093~1450℃程度
内部応力 弱い圧縮~引張 強い引張
耐食性(耐塩水噴霧) Ni-Bより良い Ni-Pより劣る
摩擦係数 Ni-Bより劣る Ni-Pより良い
浴の特徴 析出速度 7~15μm/hr 3~6μm/hr
浴温 80~95℃ 55~70℃
浴安定性 Ni-Bより安定 やや不安定
コスト比 1 3~5

無電解ニッケルボロンめっきの機能と用途

機能 用途 特徴
摺動性 機械部品、精密部品 摩擦係数が低い
硬度 機械部品、精密部品、成型金型、ゲージ 硬質クロムメッキの代替え
⇒複雑な形状でも均一にメッキできる、無電解ニッケルメッキの代替え
⇒硬化熱処理380℃なく同等以上の硬度が得られる(ひずみ予防)
耐摩耗性 機械部品、精密部品、ゴルフヘッド 摺動性と摺動性が加わり耐摩耗性にすぐれる
はんだ付け性 電子部品、端子、接点部品 ロジンフラックスを使用して容易にはんだ付けできる
金メッキの拡散防止層 電子部品 金メッキの下地メッキとして電気ニッケルメッキよりすぐれている

参考文献

佐藤誠
めっき技術Vol.17、No4〜6(2004)電気鍍金研究会会誌 誌上セミナー 無電解ニッケルめっきについて
矢部賢
めっき前処理技術のポイント(1、2)、表面技術、Vol.47、NolO〜11(1996)
丸山 清
めっき実務読本、日刊工業新聞社
日本プレーティング協会
現場技術者のための実用めっき(I〜11)、槇書店
電気鍍金研究会
めっき教本、日刊工業新聞社
表面技術
Vol、49、No2、pp46-47(1998)
山名式雄
めっき作業入門、理工学社(1993)
丸山清
めっき実務読本、日刊工業新聞社(1993)
全国鍍金材料組み合わせ連合会
めっき技術ガイド(1996)
浅原昭三
金属表面処理用語辞典、 日刊工業新聞社(1983)
日本表面処理機材工業会
新環境基準項目3物質の水質汚濁防止対策の手引き(l999)
上村工業
電子部品用製品リスト
総合技術センター
最新無電解めっき技術(1986)
石原祥江他
先端技術に対応するめっきの基礎(1994)
矢部 賢
難めっき金属の前処理、表面技術(1〜4)、Vol.48、No4〜7(1997)
二級技能士コース めっき科
独立行政法人 雇用・能力開発機構

メッキ技術館


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