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職人になるということ

先月、弊社を18年間勤め、それまでも30年近く別の会社でメッキに携わってきた方がご退職されました。

今月のゲンバ男子、斉藤博隆

職人とは何か、職人目線で語られておりますのでご興味があればご一読願います。

今の製造業は、ISO9001に代表される「規格」を基本として、誰がやっても同じ品質を保つことが出来ることが大前提となって、社内の生産システムの構築と人材育成を行っています。工業製品を製造していく中で、不良品を産まないためには必須事項だと思います。QC工程表を中心として、各工程のマニュアルと、管理項目のチェックリストを整備し、記録を徹底することを強く求められます。4Mと言われる、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(作業方法)のバラつきをいかに無くし、規格の中に納まるようにものづくりすることが今の製造業のセオリーです。

一方で、メッキや製造業の面白いところに、チャンピオンデータというものが存在します。チャンピオンデータとは、オリンピックで言えば世界新記録を樹立するようなもので、科学的には理想値をたたき出すことを指します。かなり好条件がそろわなければ通常出し得ないもので、大量生産では何万個作って1つ出来ればいいぐらいの、再現性の低いものです。

NHKの超絶 凄技!という番組をご存知でしょうか。企業や大学の研究室が、そのチャンピオンデータをお互い持ち寄って競い合うという内容です。オリンピックに使用されている砲丸を日本人が作っているとか、金メダリストのスキー板は全て同じ職人が作っているといった話も、求められる精度が極端に高い世界があり、それを作り続けることが出来る人が存在しているということの証左になっているわけです。

全国鍍金工業組合連合会という、我々も属する企業団体では毎年外観と膜厚を競うめっき技術コンクールが開催されています。

大阪には物凄い技術を持った職人がたくさんいるが、日の目を浴びない方が大勢いらっしゃるとよく耳にします。伝統工芸品と、大量生産品の両立がいかに難しいかということかもしれません。

機械は作るときに既に公差が設けられていて、その機械で作る部品にもその公差が反映されてしまいます。入ってくる材料のバラつきもあります。職人はいわゆる機械や材料の癖と呼ばれるその公差を読み取り、理想値に近づける努力をする存在であるのです。これが、ものづくりの魅力であり職人を目指す醍醐味でもあるのです。

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